2016.07.28
 

その1:IBM iとは何なのか

皆さん、こんにちは。日本アイ・ビー・エムのパワーシステムズにてエバンジェリスト業を生業としている安井です。このカラムでは主に IBM i ないしパワーシステムについて、その価値や優位性を皆さんと共有することを目的としています。こうして私がカラムに書いている以上は、皆さんにとって 「なるほどそういう事だったのか」 と思っていただけるネタを、どれだけ提供できるのかが私にとってのチャレンジであるわけです。そして皆さんがこのカラムで仕入れたネタを、どこか別なところで拡散してもらえれば、さらに IBM i の理解者が増える、そんな構図になる事を勝手ながら期待しています。

なお、あらかじめお断りですが、このカラムにて述べることは安井個人の私見に基づくものであり、必ずしも日本アイ・ビー・エム社の公式見解を代表しているわけではないことをご理解願います。

さて今回は初回ですので、IBM i とはどのようなシステムなのか、というテーマを考えたいと思います。この製品を利用された経験のある方であれば、単一レベル記憶のシステム、TIMIと呼ばれるマシン・インターフェースを備えたシステム、セキュリティ・レベルが高いシステム、など技術的な特徴をいくつか挙げることができるでしょう。ここでもし一言でと言われたら、何と答えたら良いでしょうか。実は私自身もこのような問いをもらったことがあります。初めてIBM iを採用するべきか検討中のお客様に向けて、IBM iの特徴を一通り説明すると、投げ掛けられることが多かったようです。いくつかある技術の中で、最も重要と思われるものを拾い上げる事も考えられます。そのような場合には、私自身はTIMIによって実現される、アプリケーション資産の継承性を挙げることにしています。これに留まらず、IBM iが備える技術全般を網羅するような、もっと本質的な特徴を挙げるとしたら、一歩引いた地点から俯瞰して見る必要がありそうです。

私の答えは、ビジネスのためという明確なコンセプトに基づいて設計されたシステムであること、というものです。もっと乱暴に短くするとしたら、哲学があること、です。ちょっと周囲を煙に巻くような回答ですが。

IBM i コラム挿絵1

何年か前に、米国IBMの何ヶ所かの開発部門を見学するツアーに参加されたお客様がいらっしゃいました。各部門が担当する製品やテクノロジーの説明を聞く機会を持たれたわけですが、帰国後の印象として、「オースティンは技術者、ロチェスターは哲学者」といった対比をされていました。

(安井注:オースティンは主にAIX、ロチェスターはIBM iの開発を担当)

実際に哲学者が製品開発に携わっているわけではありませんし、ロチェスターには数多くの技術者が集まっているのは紛れもない事実です。ここはロチェスターで働く技術者が「哲学」を語っていた、と考えるのが自然でしょう。そしてこの点こそが、IBM iの根底にある特徴であるわけです。

IBM i の起源にあたるシステムはSystem 38と呼ばれていました。この1978年に発表されたシステムには、それまでのコンピュータシステムには実装されていなかった意欲的な技術がいつくか盛り込まれました。それらは現在のIBM i に至ってもなお先進性を保っています。当初画期的であったということは、逆に未熟な側面があったことも否定できません。System 38 出荷開始当時は、期待したようなパフォーマンスが得られずに苦労したという逸話も残されています。

何故敢えてリスクを抱え込んでしまうかも知れない技術を盛り込もうとしたのでしょう。それはIBM iのコンセプトとして掲げた、ビジネスのためのシステム、という言葉で説明することができます。当時の多くのコンピュータは、文字通り計算機(Computeは「計算する」の意)に過ぎなかったのですが、ビジネスを支えるシステムの需要が急速に拡大することを開発者達は予見していました。ビジネスを支えるのだから、ユーザーにとってはどうするのが使い易いのか、利用形態としてどういった状況を想定するべきなのか、一般的なコンピュータが抱える技術的懸念事項の中で優先的に対処しておくべき事項とは何なのか、といった事を徹底的に検討し、それぞれに対する解決策がすなわち実装技術になっているわけです。目の前にたまたま都合の良い技術があるから実装することにしたわけではありません。

ロチェスターの開発者達は、その検討の過程を述べながら、最新技術の説明を行ったのでしょう。技術には解決されるべき課題が先にあり、解決策の価値やメリットといった背景を伴いながら、その仕組みが存在しています。ロチェスターには昔のSystem 38開発当初の心意気というか、このような思考プロセスが根付いていると言えます。他所では感じられないようなこの点こそが、IBM iの特徴なのです。

そろそろ紙面も尽きてきたので、次回はビジネスのためというコンセプトがどのようにして個々の技術にたどり着いているのか、その過程を見て行きたいと思います。ではまた。

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