2010.02.17
アーウィン・アーリー著

仮想ワークロードのためのハイ・アベイラビリティーに関する検討事項

仮想ストレージ、ネットワーク、パーティションのアベイラビリティーを確保する

この記事に注目してくださったという事は、自組織の環境に仮想ワークロードを実装し、柔軟な資源割り当て、稼働率向上、IT資源のより有効な利用などといった、統合によりもたらされる恩恵を受けようと決心したのですね。統合に付随するのは実現と検討です。統合により同一のハードウェアを共有する複数のワークロードが発生し、多くの場合、1つのワークロードが他のワークロードに対して資源をホスティングしています。こうした統合されたワークロードのアベイラビリティーを確保するにはどのようなステップを踏めば良いのでしょうか。つまり、統合アプローチにより構成上に発生しうる単一障害点を、どのようにして防いだらよいのでしょうか。

本稿ではワークロードに統合アプローチを用いる際の構成について検討すべき、いくつかの項目に焦点を当てます。ストレージ、ネットワーク通信、パーティション自体のプロセッサやメモリ資源に至るまでのハイ・アベイラビリティーを可能にするいくつかの要因について、覚えておいていただく必要があります。ここでは仮想ストレージへのアクセス、ネットワーク・アクセス、パーティション自体をも含んだハイ・アベイラビリティーを可能にする方法について述べます。本稿では、資源環境のハイ・アベイラビリティーを保つことにだけに集中します。ホスティングされているさまざまなOS環境下でのアプリケーションの動作を正常に保つという課題は、本稿の対象範囲外となります。

仮想ストレージに関する検討事項

ハイレベルで考えると、仮想ストレージの考え方は、1つのパーティションが実際の物理的なディスク・コントローラとディスク・ドライブを所有し、その物理的なストレージの一部を他のパーティションに対して提供するというものです。Power Systems環境において「ホスティングする側の」パーティションには、IBM i パーティションまたは仮想I/Oサーバー(VIOS)パーティションを使用するという、2つの可能性があります。これらのパーティションは、IBM i 6.1、Linux、AIXのパーティション用の資源をホスティングすることができ、IBM i 上のホスティングする側のパーティションは統合Windowsサーバー用のI/O資源も仮想化できます。図―1に示す構成について検討してみてください。

もしi 上のホスティングする側のパーティションが、思いもよらないシステム・クラッシュやシステムの保守でダウンしたら何が起こるのでしょうか。ホスティングする側のパーティションがアクティブでない場合は、他のパーティションに対してI/O資源を提供することはできません。別の言い方をすると、この構成では、IBM i 上のパーティションを、他のパーティションに対する単一障害点としてみることができます。この単一障害点の可能性を避ける、あるいは少なくとも緩和するためには2つの方法が考えられます。1つは仮想ストレージを2つの物理システム間でミラーリングする方法、もう1つは同じ管理システム上でホスティングする側の2つのパーティションが、ホスティングされる側の(ゲストの)パーティションがミラーリングできるようにストレージを提供する方法です。これら2つのオプションについてもう少し詳しく解説しましょう。

ミラーリングされてホスティングされているストレージ

ミラーリングされてホスティングされているストレージでは、仮想ストレージを表しているオブジェクトは、2つの物理的システム間でミラーリングできる1つの物理的ストレージ・デバイス中に置かれています。図―2に示した構成では、IBM i 上のパーティションはホスティングされているワークロード用のストレージを提供しています。ネットワーク・サーバー記憶域(すなわち仮想ディスク)は両システムの独立補助記憶域プール(IASP)中に置かれています。ジオグラフィック・ミラーリングなどといったIBM i のミラーリング技術は2台のIASP間の仮想ストレージをミラーリングするのに使用されます(1つは実運用システム上、もう1つはバックアップ・システム上)。したがって現時点では、両システムとも仮想ディスクのコピーを所有しています。

さらに、2台目のシステムあるいはバックアップ・システムもまた、ネットワーク・サーバー記述だけでなく、ワークロード用の論理パーティションを定義しておく必要があります。このソリューションをx86の統合ソリューション用に実装する場合は、このソリューションに必要となる追加の構成オブジェクトもまた、両システム上で定義しておく必要があります。実運用システム上でワークロードをシャットダウンするときは、同じワークロードをバックアップ・システム上に持っていくことができます。実際、出口ポイントがあり、ワークロードをバックアップ・システム上に持っていく作業を自動化する際に使用できるネットワーク・サーバーの変動オペレーションで利用できます。2台のSANデバイスを使用し(1台をそれぞれのシステムに接続)、リモート・ミラーリングおよびコピーなどのSAN複製機構を用いて仮想ディスクを2つのデバイス間で同期させることで、類似の構成を設定することができます。

上述のソリューションでは、仮想ディスクを表しているオブジェクトが、2台の別々のシステムに接続されたストレージ・デバイス間で同期がとられる、という点を覚えておいてください。ハイ・アベイラビリティーを備えさせようとしているワークロード用にLPARが両システムで定義されていること、バックアップ・システム側にフェイルオーバーする際にワークロードをサポートするのに必要な、プロセッサとメモリ資源があることを確認する必要があります。

同様のソリューションを実現するためのもう1つの方法は、エレガントさという意味において多少劣りますが、実運用システムとバックアップ・システム間で仮想ストレージ・オブジェクトを手操作でコピーするという方法です。ホスティングしている側のパーティションの例としてIBM i を使用する場合、SAVコマンドを使用してネットワーク・サーバー記憶域(NWSSTG)を保存し、次にRSTコマンドを使用してバックアップ・システム上にその記憶域を回復します。i6.1以前のバージョンでは、このソリューションでは記憶域がアクティブ状態にある間はコピーを取ることができないため、ホスティングされている側のワークロードをダウンさせる必要がありました。リリースi 6.1では、アクティブ状態でコピーする機能を利用して、ホスティングされている側のワークロードがアクティブな状態でも記憶域を保存することができ、より扱いやすいソリューションとなっています。バックアップ・システム上の記憶域は、実運用システムから最後にバックアップを取得した時点の状態であるに過ぎないことを覚えておいてください。したがって、このソリューションはデータに変化がほとんどないようなインフラストラクチャ・タイプのワークロードには適していますが、データが頻繁に更新されるワークロードには適していません。

ホスティングしている側のパーティション間にまたがっているホスティングされる側のストレージ

仮想ストレージをハイ・アベイラビリティーにするために使用できるもう1つの方法は、複数のソースから仮想ストレージを提供し、次にワークロードがこのストレージをミラーリングできるようにするという方法です。図―3に示す構成では、ゲストのパーティション(仮想ストレージにより恩恵を受けるパーティション)は、2つのホスティングしている側のパーティション(ホスティングしている側のパーティションはIBM i パーティションまたはVIOSパーティションまたはその組み合わせ)からストレージの提供を受けています。この構成では、ゲストのパーティションとホスティングしている側の各パーティションとの間に仮想SCSIアダプタ関係を結ぶ必要があります。

さて、ゲストのワークロードは複数のディスクが使用できるので、これらのディスクに対して独自のソフトウェア・ディスク保護スキームを実装することができます。たとえば、ゲストのワークロードがLinuxパーティションだった場合、LinuxでのソフトウェアRAIDサポートを使用して、Linuxがアクセスする複数の「ディスク」に対してストレージをミラーリングすることができます。ホスティングしている側のパーティションの1つがダウンした時、ホスティングされている側のOSはそのパーティションを「故障」ディスクとみなし、ミラーリングされたディスクを使用して稼働を続けます。そしてホスティングしている側のパーティションが元に戻ったら、そのディスクがホスティングされている側のOSに対して再び利用可能になり、再度ミラーリングするかあるいはストレージを同期させることができます。ホスティングされている側のIBM i パーティションに対してこのタイプの構成をサポートする機能はPower 6ハードウェアに依存しており、IBM i ゲストとホスティングしている側のパーティションの両方が、リリース・レベルi 6.1以上である必要があります。

ネットワークに関する検討事項

仮想ネットワーク接続のハイ・アベイラビリティーを達成するためにできることについて考えてみましょう。図―4に示す構成では、仮想LANがパーティション間に確立されていて、その仮想LANがIBM i パーティション上のネットワーク・インタフェースを介して外部ネットワークにブリッジされて(ルーティングされて)います。ご覧の通り、IBM i パーティション上の物理的なネットワーク・アダプタが運用不能になった場合、仮想LAN上のすべてのパーティションへのネットワーク・トラフィックが失われます。複数の物理ネットワーク・カードに対するIBM i のプロキシ・サポートを利用することで、この問題を緩和することができます。この方法を理解するには、まずプロキシ・アドレス解決プロトコル(ARP: Address Resolution Protocol)が、どのようにして物理ネットワークと仮想ネットワークの間のトラフィックを可能にしているのかの基本を理解する必要があります。

プロキシARP環境では、仮想ネットワーク接続用にサブネットが作成されます。このサブネットは、物理的なIBM i ネットワーク・アダプタが接続されている、より大規模なネットワークのサブネットです。仮想イーサネット・アダプタ上のアドレスとサブネット・マスクはネットワーク・サイズとサブネット・レンジの開始点と終了点を示しています。さらに、仮想LAN上のワークロードのネットワーク構成は、IBM i パーティションの仮想LAN接続のアドレスをそのルーターとして使用します。仮想LAN上のワークロードが仮想LANアドレス範囲外のアドレスと通信する必要があるときは、ゲートウェイを介して通信し、IBM i パーティション上の外部インタフェースにブリッジします。パズルの最後の1ピースは、IBM i パーティション上の仮想ネットワークと物理ネットワーク間のブリッジです。このブリッジは、IBM i の仮想LANのTCP/IPインタフェースの関連ローカル・インタフェース(Associated Local Interface)設定で構成します。もしここで話をおしまいにしてしまうと、単一障害点の可能性が残ることになります。つまり、関連するローカル・インタフェースがダウンするとブリッジがダウンし、仮想LANへのネットワーク通信が行えなくなるからです。

これを解決するソリューションは、IBM i パーティション上の仮想イーサネット・インタフェースに対して、複数の物理インタフェースへのプロキシ・アクセスを許可するという方法です。この構成は図―4に示す通り、iSeries Navigatorで設定します。この構成を使用してiSeries Navigatorの仮想LAN接続のためのTCP/IPインタフェースを作成し、プロパティを調整します。プロキシARPが有効で、複数のインタフェースが優先インタフェース・リストに一覧されていることを確認してください。

動作の仕組みは以下の通りです。両方の優先インタフェースがアクティブであると仮定して、仮想LAN上のインタフェースが起動された時に、一覧中の最初の物理インタフェースにプロキシ・アクセスします。そのインタフェースがダウンしている場合に限って、トラフィックは一覧中の2番目のインタフェースにプロキシされます。1番目のインタフェースが再びアクティブな状態になった場合は、トラフィックは即座に1番目のインタフェースにプロキシされます。これは、1番目のインタフェースの優先度が1番高いと構成に規定されているからです。以上のことはすべて、ネットワークの接続性が失われることなく行われます。したがって、ハイ・アベイラビリティーを備えたネットワーク構成が確立できたことになります。この方法では、負荷バランシング機能は提供しないという点を覚えておいてください。優先インタフェース・リスト中の2番目以降のアドレスは、1番目のインタフェースがアクティブでなくなった時にのみ使用されます。この機能が、仮想LAN上のIBM i インタフェース用に実装された時は(つまり、他のワークロード用のゲートウェイとして機能するインタフェースである場合は)、図―5に示した通り、仮想LAN上のすべてのワークロード用のハイ・アベイラビリティーを備えたネットワーク構造がソリューションの結論となります。

もちろん、このソリューションには、ルーティングを実行しているIBM i パーティションが利用できる複数の物理的なネットワーク接続が必要となります。覚えておかなければならないのは、Power6システム上の統合仮想イーサネット(IVE: Integrated Virtual Ethernet)アダプタで、これはIVE上で最大4台の物理ポートを介して、最大32の個別のネットワーク接続を確立することができます。IVEからのネットワーク接続の1つと、2つ目のIVEではないネットワーク接続をIBM i パーティションにマッピングするのは、このソリューションに必要な複数の物理ネットワーク接続を提供する方法として良い方法と言えるでしょう。

次回の記事では、仮想化環境におけるネットワークで利用できるさまざまな方法について詳しく述べます。

ライブ・パーティション・モビリティ

ここまでで、ハイ・アベイラビリティーを備えるワークロードを支える、仮想ストレージと仮想ネットワークの構築方法について述べてきました。最後に述べる項目は、パーティションそのものをハイ・アベイラビリティーにする方法です。LinuxパーティションとAIXパーティションについては、PowerVMのコンポーネントの1つであるライブ・パーティション・モビリティを使用することで、稼働中のパーティションとそのパーティションがホスティングしているアプリケーションの移動をスムーズにし、1台の物理サーバーから別のサーバーに、そのパーティションが提供しているインフラストラクチャ・サービスを中断することなく移動します。通常は、稼働中のパーティションを1台の物理システムから別の物理システムに移動するプロセスは、数秒しかかかりませんし、プロセッサの状態、メモリ、付属の仮想デバイス、接続中のユーザーなど、OSの全体的な状態は維持されます。ライブ・パーティション・モビリティは一歩先を見越すプロセス、つまり計画停止に対するソリューションとして設計されています。稼働中のパーティションとアプリケーションを1台のサーバーから別のサーバーに移動できるので、ライブ・パーティション・モビリティはSLAを維持するのに大いに役立ちます。保守やその他のイベントによって実運用システムを計画停止するさいに、ワークロードを利用不可能にする必要がありません。

パーティションのモビリティでは、両システムがPower6モデルであること、パーティション用のすべてのI/OはVIOSサーバーによってホスティングされていなければならないなど、満足しなければならないいくつかの要件があります。ライブ・パーティション・モビリティは、アプリケーションを1台のサーバーから別のサーバーに動的に移動させる機能をサポートしているので、計画停止時間を削減するには良いソリューションとなりえます。さらに、ライブ・パーティション・モビリティは、負荷の高いサーバーから容量に余裕のあるサーバーにワークロードを移動することで、変化するワークロードやビジネス要件に対応する必要性に応えることができます。またライブ・パーティション・モビリティは、ワークロードをピークタイム時以外に統合し、サーバーを停止させることでエネルギー消費量を削減するという要望に応えることもできます。

仮想アベイラビリティーの恩恵

仮想化により提供される、ワークロードの実装とそのワークロードのハイ・アベイラビリティーが確保できるという柔軟性について、洞察が深まったと思います。仮想化は、企業のIT投資効率を最大化しながら資源に要する費用を削減するのに大変役立つ技術です。PowerVMと仮想化の機能を適切に実装すれば、仮想ワークロードのアベイラビリティーを確保することができます。

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