2017.01.12
Alex Woodie 著

IBM iのスキル不足がプラットフォームの移行を促している?

IBM iプラットフォームは、数々の逆風にさらされています。たとえば、初期費用が高いこと、レガシーであると認識されていること、技術上の意思決定の際にためらわずにX64テクノロジーを選んでしまうエグゼクティブが多いこと、などです。これらはすべて、IBM iコミュニティでは対処のしようがない、外部から吹いてくる逆風です。しかし、IBM iコミュニティの内部で吹いている逆風もあります。それは、必須とされるIBM iのスキルを備えた人材の不足が進んでいることです。

スキル不足が一因でIBM iプラットフォームからの移行を進めている企業があります。ジョージア州アトランタを拠点とするPRGX社です。同社は、数十年に渡り、IBMのミッドレンジ サーバーを用いて、買掛金回収監査サービスの様々な業務を自動処理してきました。そのサービスには、製造業者や卸売業者から小売店やスーパーに提示されたものの履行されていない取引や割引に対する追跡調査などがあります。PRGX社では、クライアントに代わって毎年10億ドル以上を回収しており、そのクライアントの中には、小売業の大手も何社か名を連ねています。

PRGX社のデータ サービス担当ディレクター、Jonathon Whitton氏は、監査回収サービスに関連するETLワークロードの大半を、IBM iサーバーから移行し、Hadoopが稼働するX64サーバーの分散型クラスター上で処理するようにした主な理由は、処理速度だったと述べます。Whitton氏は先日の『IT Jungle』のインタビューで、「処理速度は10倍以上向上しました。」と述べています。Hadoopでは、「AS/400で140時間掛かっていた処理が、6~8時間で完了しています。」

そうした処理速度は、PRGX社のデータサービス部門の業務遂行能力に直接的な影響を与えます。データサービス部門は、実際の回収業務を行う監査チームに対し、行動につながる知見を提供します。より多くのインボイス、発注書、領収書およびEメールをシステムにロードして解析できれば、不明となっている取引を見つけられる可能性が高くなり、PRGX社とクライアントが回収できる金額が多くなります。

PRGX社では、以前はIBM iサーバー上で実行していたRPGベースのETLジョブの多くを、Apache Hiveと呼ばれる同社のHadoop SQL環境で実行されるHive QLベースのバッチ ジョブへ書き直しました。PRGX社は、IBM iプラットフォームからまだ完全には移行していません。大手クライアント一社向けのワークロードの1/3が残っています。しかし、このプロプライエタリなスケールアップ サーバーから、オープンソースのスケール アウト クラスターへの完全移行まで、あと一歩のところまで来ています。

それは、1億3,800万ドルの企業にとって大規模なマイグレーションです。また、以前は100台以上のSQL Serverシステム上で稼働していた処理業務の大部分を、Cloudera Distribution of Hadoop(CDH)システムへ移すことでもあります。PRGX社は、ETLソフトウェア ベンダーのTalend社の支援を受け、Apache Sparkなどの新たなHadoopテクノロジーを活用し、パフォーマンスをさらに向上させ、アナリストによるデータの調査を、以前より迅速かつ簡単に繰り返し実施できるようにすることを目指しています。

Whitton氏は、PRGX社のデジタルトランスフォーメーションが、Hadoopへの切り替えという形ではなく、IBM iシステム上で実現されることもあり得たと述べています。価格性能比の点ではHiveに遅れを取るにしても、特に、それまで使い続けてきたハードウェア、最新のPower8サーバーの膨大な処理能力、およびHiveに比べてはるかに成熟したデータベースであるDB2に対してIBMが継続的にSQLの機能強化を行っていることを考えると、別の方法を選ぶこともできたのかもしれません。

「AS/400をもう1台購入し、そこでデジタルトランスフォーメーションが実現される可能性もありました。」とWhitton氏は述べます。「ただし、コストは違ったものになっていただろうという気はしますが。」

また、PRGX社がIBM iプラットフォームからの移行を決めた際には、スキルの問題も重要視された、とWhitton氏は述べます。「リエンジニアリングを行うことによってAS/400で古いコードを使い続けることができたとしましょう」と彼は述べます。「それでもAS/400に関しては、弊社の環境では供給できるスキルが限られています。弊社のビジネス アナリストのほとんどが慣れているのは、RPGやCOBOLではなく、SQLなのです。弊社にとっては、移行の方が適していたわけです。」

IBM iスキルの不足は、ここ数年、大きなテーマとなっています。たとえば、今年、実施されたSoftLanding Systems社の調査で、デジタル トランスフォーメーションの1番の障壁として、RPGの熟練度やIBM i OSについての一般的なナレッジといったIBM iスキルの不足が挙げられたことは、少し驚きでした。

SoftLanding社の調査では、IBM iスキルを備えた技術者の不足、と答えた回答者は50%に上りました。その質問に対して一番多かった回答であり、コスト面の考慮(46%)と、コア システムを変更するリスク(42%)がそれに続きました。

「人々が「IBM iスキル」と口にすることには、ちょっとしたためらいがあったはずです。だからこそ驚きでした」と、SoftLanding社のオペレーション マネージャー、Jim Fisher氏は、『IT Jungle』の7月の記事our July storyで述べています。「PHPやJavaといったWebベースの開発の言語が1番の回答になるだろうと思っていました。」

また、IBM iのスキル プールの縮小は、IBM iワークロードのクラウドへの移動にも影響を与えています。アイオワ州を拠点とする、IBM i環境のホスティングを行っているマネージド サービス プロバイダー、LightEdge Solutions社のソリューション アーキテクト、Roger Mellman氏は、IBM iの管理者が退職することは、同社にとって良いビジネスになると述べます。

「IBM i環境をどのように管理するかについては微妙な違いがあります」と彼は述べます。「しかし、これまでの様々な業務を通じて思うことは、基本的なAS/400タスクの実装が不足しているということです。これは、IBM i管理者がCFOやHRを兼務していたり、社内の最古参でもあったりすることによるものです。弊社では、SMB顧客にもエンタープライズ顧客にも同じようにかかわることがありますが、その理由としては、IBM i管理者が退職するためであったり、新たなコンプライアンス要件に適応するためにプラットフォームの変更が求められるためであったりすることがよくあります。」

IBMは、進化し続ける環境の中でIBM iサーバーの重要性を維持するために多くのことを行ってきました。SQLのサポートもそうですし、Node.JSやPythonといった最新のすべてのスクリプト言語のサポートもその一例です。また、多種多様なERPシステムがこれまでどおりアクティブにサポートされています(詳細は、関連記事"How IBM i Fared in Top ERP List"を参照してください)。

縮小してはいるものの、コミュニティの中核となっているいくつかのベンダーからIBM i向けのアドオンツールが提供されていることもあり、IBM iプラットフォームのセキュリティおよび信頼性は、さすがビジネスクラスのサーバーと言えるものとなっています。これと比べると、Hadoopのセキュリティは、まさに今、組み込まれつつあるところであり、これは、当初はYahooでワールド ワイド ウェブをインデックス化するために開発されたものだったためです。

IBM iサーバーの重要性を維持しようとするならば、IBM iサポーターはPRGX社においてHadoopが占めるシェアを勝ち取る必要があります。より新しい先端技術に目を向け、AS/400から飛び移ろうとする企業は常にあるものです。マイグレーションは常に起こるものであり、そのいくつかには、PRGX社のマイグレーションがそうであるように、相応な理由があるものです。しかし、IBM iサーバーの競争力を維持しようとするならば、IBM iスキルの不足の問題は、すぐにも取り組まなければなりません。

IBM iスキルの問題に取り組むためにIBM iコミュニティが行えることがいくつかあります。何よりもまず、IBM iのショップでは、新たな世代のプログラマー、オペレーター、管理者、およびアーキテクトの育成にコミットする必要があります。現世代のIBM iスキルを持つ人材(主にベビーブーマーやジェネレーションX世代)が退職し始めているため、特にその必要性は高いと言えます。企業は自社のIBM iシステムに何十億ドルも投資してきました。投資してきたものを維持しないとしたら、怠慢と言えるのではないでしょうか。

人材への投資は、急速に変化するITランドスケープにおいてIBM iプラットフォームの重要性を維持するための最も効果的な道であると言って間違いないのではないでしょうか。

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